上智大学理工学部の内田寛教授、東京科学大学(Science Tokyo)物質理工学院 材料系の影山壮太郎大学院生(修士2年)、岡本一輝助教、舟窪浩教授、横田紘子教授、米国のペンシルベニア州立大のVenkatraman Gopalan(ベンカタラマン・ゴパラン)教授、東北大学の平永良臣准教授らは、二つの元素が存在する、ウルツ鉱構造窒化物において、圧電性(用語1)や強誘電性(用語2)を示す物質を作製することに世界で初めて成功しました。
ウルツ鉱構造を有する窒化物は、ノーベル賞を受賞した青色LEDで使用されている窒化ガリウム(GaN)や、スマートフォンの高周波ノイズフィルタで使用されている窒化アルミニウム(AlN)に代表される、優れた機能性物質群です。さらに近年では、従来の半導体に加えて、絶縁体の形で、エネルギー変換材料や強誘電体メモリなどへの応用も急激に進んでいます。しかし、選択できる金属元素の種類が限られているため、制御できる特性の範囲も限定されてしまうという問題点がありました。
今回の研究では、資源量が豊富なマグネシウム(Mg)とシリコン(Si)の二つの元素を含む窒化物で、GaNやAlNと同じウルツ鉱構造の絶縁体MgSiN2薄膜の作製に世界で初めて成功しました。このウルツ鉱構造の絶縁体は、MgやSiのいずれかのみでは合成できず、二つの元素が同時に存在することで作製が可能になります。得られた物質は、既知の物質とほぼ同等の光学および圧電特性を有することも確認されました。
この成果により、他にもさらに多くの組成でのウルツ鉱構造物質合成が可能になり、それによって、従来考えられていたよりも飛躍的に幅広い特性が実現することが期待できます。
本成果は、2月6日付(現地時間)で「Advanced Electronic Materials」誌に掲載されました。
詳細は下記プレスリリースPDF版をご覧ください。
(用語1) 圧電性:電気的なエネルギーを機械的なエネルギーに変換する特性。
(用語2) 強誘電性:プラスとマイナスに帯電している元素から構成されている物質のうち、電圧をかける方向によって、プラスとマイナスの元素の位置を変えることができる特性。
媒体名 Advanced Electronic Materials
論文名 Realization of Non-equilibrium Wurtzite Structure in Heterovalent Ternary MgSiN2 Film Grown by Reactive Sputtering
著者 Sotaro Kageyama, Kazuki Okamoto, Shinnosuke Yasuoka, Keisuke Ide, Kota Hanzawa, Yoshiomi Hiranaga, Pochun Hsieh, Sankalpa Hazra, Albert Suceava, Akash Saha, Hiroko Yokota, Kei Shigematsu, Masaki Azuma, Venkatraman Gopalan, Hiroshi Uchida, Hidenori Hiramatsu, Hiroshi Funakubo
上智学院広報グループ(sophiapr-co@sophia.ac.jp)