上智大学理工学部物質生命理工学科の臼杵豊展教授は、ジャマイカ近海に生息するアオコ(シアノバクテリア)から得られた天然有機化合物(※1)ジャマイカミドの世界初の化学合成(全合成※2)に成功しました。
本研究成果は、イギリス王立化学会の科学雑誌「Organic & Biomoleculer Chemistry」に2024年4月25日にオープンアクセス掲載され、同誌のフロントカバーに採用されました。
海洋生物は、新たな医薬品のソースとして、近年注目されています。ジャマイカ近海のアオコ(シアノバクテリア)Moorea producensから単離されたジャマイカミドは、海洋天然物化学の世界的権威Gerwick教授(UCサンディエゴ)らによって2004年に報告されました。
ペプチドとポリケチドが結合したユニークなこの天然有機化合物は、神経細胞毒性やナトリウムチャネル阻害活性などの魅力的な生物活性をもちます。本研究では、有機合成化学を基盤として、ジャマイカミドBの最初の化学合成(全合成)を達成しました。今後、中間化合物や誘導体の生物活性試験により、新しい医薬品開発などへの応用研究が期待されます。
(※1) 天然有機化合物: 自然界の営みの中で、生物が創り出す特に二次代謝産物の総称。多くの場合、化学構造が複雑で魅力的な生物活性をもつ化合物群。現代の医薬品の半数が、天然有機化合物由来またはその類似体とされる。
(※2) 全合成:有機化学者が発見・開発した様々な反応を駆使し、安価な原料を出発物質として、多段階を経て、天然有機化合物を人工的に創り出す(合成する)こと。有機合成化学は、医薬品開発に寄与する重要な学問分野。
上智大学 理工学部 物質生命理工学科
教授 臼杵 豊展 (E-mail:t-usuki@sophia.ac.jp)
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