機能創造理工学科久森研究室博士前期課程1年の野崎光司さんが日本材料学会関東支部2017学生研究交流会において優秀講演賞(ポスターセッションの部)を受賞しました。そこで野崎さんに受賞された業績についてご紹介いただきました。
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Q)野崎さんの研究の背景はどのようなものでしょうか?
A)健康寿命の延伸を目指した下肢筋力測定機器の開発に取り組んでいます。人生の最後まで自分の足で歩くためには、運動能力の維持が重要です。運動能力の評価は、筋力を測定しています。しかし、解剖学的な筋肉と骨、関節の観点から筋力を正しく測定されていないのでは?という疑問があります。
Q)その疑問をもう少し教えてください。
A)私たちが歩くときには、膝を伸ばす大腿四頭筋(※)と、膝を曲げるハムストリング(※)が機能しています。これらの筋肉の筋力低下は、膝の痛みや転倒を誘発します。したがって、大腿四頭筋とハムストリングは、歩くときに重要な筋肉といわれています。これらの筋肉は、大腿骨と脛骨に付着した二関節筋であることがわかっています。つまり、関節の角度で筋力は異なることが予想されます。しかし、一般に使用されている筋力測定機器は、必ずしも二関節筋を考慮していません。1回限りの筋力測定であれば問題はありませんが、トレーニングやリハビリなどの経時的な変化を知りたい場合は、股関節と膝関節の角度を常に一定な条件で測定する必要があります。
※大腿四頭筋:太ももの前面部に位置する膝を伸ばす筋肉群
※ハムストリング:太ももの背面部に位置する膝を曲げる筋肉群
Q)野崎さんの研究の内容を教えてください。
A)久森研究室では、関節角度を考慮した大腿四頭筋とハムストリングの筋力測定が可能であること、さまざまなシチュエーションで計測が可能であることを実現する「下肢筋力測定機器の開発」を行っています。
Q)実際に開発した下肢筋力測定機器とはどのようなものですか?
A)測定機器は、背もたれとシート、固定されたアームと足を当てるレッグパットで構成されています(図1)。測定機器は折り畳むことができ、持ち運びが可能です。座った状態で背もたれとシートに体を固定することで、常に同じ関節角度で再現性の高い筋力の測定が行えます。被験者がレッグパットに加えた力を、アームに取り付けたセンサーで測定することで筋力を測定しています(図2a,b)。
図1 開発した下肢筋力測定機器
図2 (a)大腿四頭筋と(b)ハムストリングの筋力測定の様子
Q)今後の方針について教えてください。
A)さまざまな体格・体系に対応でき、精度や再現性を高めた測定器の開発を行います。そして,製品化を目指しています。