理工学部機能創造理工学科の足立匡准教授、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の堀尾眞史大学院生、藤森淳教授、東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の小池洋二教授らの研究グループは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)及び広島大学との共同研究で、放射光施設Photon Factoryと広島大学放射光科学研究センター(HiSOR)を用いることによって、反強磁性の影響のない高温超伝導状態を世界で初めて観測し、その超伝導状態が従来考えられていたよりも広い電子濃度領域で、しかもより高温まで実現されていることを明らかにしました。本研究は、超伝導と反強磁性の関係を最重要視してきたこれまでの高温超伝導の物理の根幹部分に見直しを迫る重要な成果です。
本成果の詳細は、2016年2月4日に英国科学誌「Nature Communications」にオンライン公開されました。
【本研究のポイント】
●反強磁性の影響が強く残ることで知られる電子ドープ型銅酸化物高温超伝導体で、反強磁性の影響が排除された超伝導状態を初めて観測。
●反強磁性秩序を排除することにより、超伝導臨界温度の上昇とともに、超伝導が実現される電子濃度領域が大きく広がることを観測。
●高温超伝導の物理の根幹をなす超伝導と反強磁性の関係に再検討の必要性をもたらす。
【論文名および著者】
雑誌名:「Nature Communications」 (2016年2月4日オンライン公開)
論文タイトル:Suppression of the antiferromagnetic pseudogap in the electron-doped high-temperature superconductor by protect annealing
著者:M. Horio, T. Adachi, Y. Mori, A. Takahashi, T. Yoshida, H. Suzuki, L. C. C. Ambolode II, K. Okazaki, K. Ono, H. Kumigashira, H. Anzai, M. Arita, H. Namatame, M. Taniguchi, D. Ootsuki, K. Sawada, M. Takahashi, T. Mizokawa, Y. Koike, and A. Fujimori
オンライン版URL: http://www.nature.com/ncomms/2016/160204/ncomms10567/full/ncomms10567.html
なお、この記事はプレスリリースされ、本学公式HPにも掲載されています。