発光による衝突後効果の変化を利用するアト秒「ストップウォッチ」—原子の内殻過程をアト秒で追及する新しい手法—
発表のポイント
原子の電子構造のダイナミックスをアト秒オーダーで追及するための新しい方法を提案し、実証した。
衝突後相互作用(PCI)によるオージェ電子のエネルギー変化から原子内殻過程における時間情報を得た。
上記を放射光と電子分光を用いた実験により達成し、理論計算と比較検討した。
上智大学(学長:曄道佳明)の小杉聡共同研究員・小池文博共同研究員・東善郎客員教授、および量子科学技術研究開発機構、ソルボンヌ大、理化学研究所、兵庫県立大のグループは原子の多段階内殻緩和過程の時間依存をアト秒オーダーでプローブすることに成功しました。この成果は、米国物理学会発刊のPhysical Review Letters 誌の5月8日付けオンライン版に掲載されました。
論文名および著者
雑誌名:Physical Review Letters
論文タイトル:Fluorescence Time Delay in Multistep Auger Decay as an Internal Clock
オンライン版URL :https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.124.183001
DOI: 10.1103/PhysRevLett.124.183001
著者(共著):Satoshi Kosugi(小杉聡・上智大)、Fumihiro Koike(小池文博・上智大)、Masatomi Iizawa(飯澤正登実・上智大)、Yoshiro Azuma(東善郎・上智大)、James Harries(ジェームズハリーズ・量研)、 Marc Simon(マルクシモン・ソルボンヌ大)、Maria Novella Piancastelli(マリアノベラピアンカステッリ・ソルボンヌ大/ウプサラ大)、Renaud Guillemin(ルノーギユマン・ソルボンヌ大)、Masaki Oura(大浦正樹・理研)、 Kenji Tamasaku(玉作賢治・理研)、Tatsuo Gejo(下條竜夫・兵庫県立大)
成果の概要
原子、分子、固体など広い分野にわたって高速時間分解実験(ultra-fast science)は現在大きな興味がもたれている。その為に国内外において巨大なX線自由電子レーザー(XFEL)施設が建設され高速検出技術の開発も競って進められている。実験手法はポンプ・プローブによる測定が主流であり、最近はフェムト秒オーダーの分解能が得られている。本研究においては放射光と通常の電子分光実験で、自然に生ずる蛍光を仲立ちとしたポンプ・プローブ機能もしくは実質的なストップウォッチ機能をはたす内殻原子過程についてPCI(衝突後相互作用)を解析することによってXFELを凌ぐ約100アト秒の精度で崩壊チャンネル間の時間差を明らかにすることに成功した。
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本件に関するお問合せ先
上智大学客員教授 東 善郎
Email: y-azuma[at]sophia.ac.jp *[at]を@に変換
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