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2026.10.30

水の分子模型「WaterPuzzle」を活用した新たな化学教育プログラムを開発

水素結合や多様な氷の結晶構造を体験的に学ぶ授業を実践

本研究の要点

  • 独自に開発した水の分子模型「WaterPuzzle」を活用し、水分子間の水素結合や多様な氷の結晶構造などを体験的に学べる教育プログラムを開発した。
  • 磁石を内蔵した分子模型を組み立てることで、目に見えない水分子同士の相互作用や三次元的な構造を直感的に理解できるように工夫した。
  • 開発した教育プログラムは、本学理工学部の講義や高校生向けオープンキャンパス模擬授業などで実践され、実際の教育現場での活用も進められている。

研究の概要

物質生命理工学科の近藤次郎教授の研究グループは、独自に開発した水の分子模型「WaterPuzzle」を活用し、水素結合や多様な氷の結晶構造などを体験的に学ぶための化学教育プログラムを開発しました。

WaterPuzzleは、近藤教授と株式会社スタジオミダスが共同開発した、磁石を内蔵した水分子の模型です。水分子同士が水素結合によって結びつく様子を、模型を実際に手で動かしながら学ぶことができます。

今回、博士前期課程2年の大谷佑奈さんらは、物質生命理工学科のTania Peñaflor特任助教と共同で、この模型を用いた教育プログラムを構築しました。このプログラムは、上智大学理工学部英語コースの「Basic Chemistry」や、高校生を対象としたオープンキャンパスの模擬授業などで実践され、実際の教育現場での活用も進められています。

本研究は、分子模型の開発から教育プログラムの構築、実際の授業での活用までを一体的に進めた取り組みです。研究成果は、化学教育分野の国際学術誌 Journal of Chemical Education に2026年9月30日付で掲載されました。

プレスリリースPDF版はこちら

論文名および著者

媒体名

The Journal of Chemical Education

論文名

WaterPuzzle: An Educational Activity Using a 3D-Printable Magnetic Molecular Model to Explore Hydrogen Bonding, Ice Crystals, and Hydration of Molecules

論文掲載日

2026年9月30日

DOI

10.1021/acs.jchemed.6c00443

Authors

Yuna Ohtani(筆頭著者), Konatsu Kondo, Shota Nakamura, Tania Guadalupe Peñaflor Galindo, and Jiro Kondo(責任著者)

研究の背景

水は私たちの生活に欠かせない物質であり、その性質を理解することは化学を学ぶ上での基礎となります。水分子は、酸素原子1個と水素原子2個から構成されており、分子同士が「水素結合」と呼ばれる相互作用によって結びつきます。この水素結合は、氷の結晶構造をはじめ、水が示すさまざまな性質に深く関わっています。しかし、水分子や水素結合は目に見えず、教科書に描かれた二次元的な図だけでは、その三次元的な構造や分子同士のつながりを理解することは容易ではありません。また、従来の分子模型では、分子の形状を再現できても、分子同士が水素結合によって引き合い、特定の方向に結びつく様子を体験的に理解することには限界がありました。

そこで近藤教授は、株式会社スタジオミダスと共同で、水分子の形状と水素結合の方向性を表現できる分子模型「WaterPuzzle」を開発しました。この模型には磁石が組み込まれており、水分子同士の相互作用を手で組み立てながら学ぶことができます。今回の研究では、WaterPuzzleを実際の化学教育に取り入れるための教育プログラムを開発・実践しました。学習者が自ら模型を操作することで、水素結合の形成や氷の結晶構造、分子の水和などを三次元的に考察できるようにしました。

今後の展望

WaterPuzzleは、目に見えない分子の世界を、手で触れながら直感的に学ぶことができる教材です。今回開発した教育プログラムを通じて、水素結合や氷の結晶構造といった抽象的な化学の概念を、より身近なものとして理解できるようになることが期待されます。また、今回公開した3Dプリンター用の設計データを活用することで、学校や博物館などが独自に教材を製作することも可能になります。

今後は、大学や小中高など、さまざまな教育現場での活用を広げるとともに、学習者の理解度や教育効果の検証を進めることで、より効果的な化学教育プログラムへと発展させていきたいと考えています。

助成情報

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の生命科学・創薬研究支援基盤事業および公益財団法人東レ科学振興会の東レ理科教育賞・企画賞による支援を受けて実施されました。

用語

(※1)水素結合: 水素原子を介して分子同士、あるいは分子内の原子同士に働く相互作用の一種。水の性質や氷の結晶構造を理解する上で重要な役割を果たしている。

(※2)氷の結晶構造: 水分子が水素結合によって規則的に配列した構造。氷には複数の結晶構造が存在し、温度や圧力などの条件によって異なる構造をとる。

(※3)水和: 水分子が他の分子やイオンの周囲に集まり、相互作用する現象。物質が水に溶ける仕組みや、水溶液中での分子の振る舞いに関係している。

関連リンク

WaterPuzzle公式ウェブサイト

関連情報(先行開発した分子模型「BasePairPuzzle」の実績など)

研究内容に関するお問合せ先

上智大学 理工学部物質生命理工学科 教授 近藤 次郎 (j.kondo@sophia.ac.jp)

報道関係のお問合せ

上智学院広報グループ (sophiapr-co@sophia.ac.jp)